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日刊SS090705

GrayPよりお題『舌』です。ちょっと切ないお話かも。
実験的なテイストを多分に含む場合が多いので、そこんとこよろしくなのです。

次のお題はバロンPよりお題『風呂敷』です。

 彼とキスをするのは初めてと言うわけではない。
  私、如月千早と担当プロデューサーは、今では事務所公認の交際相手である。キスの1つや2つ、していない方がおかしいというものだろう。
 とは言え――
「この前、プロデューサーと見た恋愛映画で、それはもう濃厚なキスをするシーンがあって」
「ふむふむ」
「ああいうの、しなくちゃいけないのかなって」
「必要に迫られてするってのは何だか違うんじゃないかなぁ?」
 相談に乗ってくれているのは、同じ事務所の仲間で、同い年で、色々とアドバイスをしてくれる親友の春香。
 彼女自身は恋愛経験がないそうだが、恋愛相談役として学校では名を馳せているらしい。本当かどうかは知らないが。
「こう、もっともっとって求めると、自然とそうなるんじゃないかなって思うけど」
「……もっともっと、ね……」
 マグカップに注がれたコーヒーに口をつける。
 テーブルを挟んで向こう側にいる春香は明後日の方向を向きながら、口元をへの字にしてむー、と唸っていた。
「えっと、千早ちゃんって」
「ええ、何かしら」
「プロデューサーさんとえっちなコトしたいって思う?」
 ぶふぁっ! と黒い液体が私の口から飛び出す。
「な、ななな、なななな」
「……ちょっと直接的すぎたかな」
 春香がハンカチでかけられたコーヒーの飛沫をふき取りながら冷静に言う。
「別にえっちぃことに限った話じゃなくてね、プロデューサーさんにして欲しいこととか、したいこととか、そういうのがあるのかなって」
「して欲しいこととか、したいこと」
「そうそう」
 オウムのように春香の言葉を繰り返す。
 春香はそんな私の言葉に頷きながら、少し目を細める。
「傍から見てると、千早ちゃんは欲しがっている様に見えるけど、気付いてくれるのを待ってる様にも見えるよ」
「……よく見てるのね」
「まあ、親友ですし」
 椅子の背もたれに身を預けながら、春香が言う。
 少しだけ、胸を張っているのだろうか。その姿はちょっとだけ誇らしげに見えて、私もちょっとだけ嬉しい。
「でも、待ってるだけじゃダメだよー。プロデューサーさん、恐ろしく鈍感だから」
「そうね、確かにそうだわ」
 二人して笑う。
 まったくもって、彼は鈍感だから。
「私としては、千早ちゃんも、プロデューサーさんも、幸せになって欲しいからさ。
 無理しないで、背伸びしないでいいから、素直に付き合って欲しいっていうか」
「素直に?」
「うん。プロデューサーさんは、千早ちゃんをちゃんと受け止めてくれるって思うから」
 そういう春香の目は優しくて、でも、少し寂しそうだった。
 胸が、痛む。
 ――口には出さないけれど、春香は彼が好きだったんじゃないかって思う時がある。恋する乙女の直感、と言う奴だ。
 それに気付いていながら、こうして相談に乗ってもらう私は、嫌な女なのだろうか。
 少しだけ、静かな時間が流れる。
「千早ちゃん」
 春香が、私を見ていた。
 まっすぐ、正面から。
「がんばってね」
 言葉は1つ、けど、そこに込められた意味はきっと、沢山。
「ええ、勿論」
 だから、私も、精一杯の気持ちを込めて、言葉を返した。

***

「おーい、千早ー。って、春香と話してたのか」
「ああ、プロデューサーさんの話をしてたんですよ。プロデューサーさんが鈍感だって」
「ええっ、俺の何処が鈍感だって言うんだよー」
「何処が鈍感じゃないって言えるんですかー?」
 春香がおかしそうに笑いながらプロデューサーさんと言い合う。
 そんな彼女は私をちらり、と見ると隣の椅子においていた手提げのバッグを手に取り、立ち上がる。
「では、邪魔者は退散しますか。お幸せにー」
「ああっ、こら春香っ。訂正しろぉっ!」
 子供のように怒る彼をやり過ごしながら、春香は部屋から出て行く。
 最後に私のほうを見ると、とびきり魅力的なウインクを寄越してくれた。
 まったく、私には過ぎた親友だ。
「ええと、プロデューサー」
「ん? どうした、千早」
 プロデューサーが此方を向く。
 今、部屋に居るのは私達だけ。人目を気にする必要は、ない。
「少し、目を瞑って下さい」
 察してくれたのか、言われたまま目を瞑るプロデューサー。
 私はそんな彼の唇に、自分の唇を重ねる。
 でも、それだけ。一緒に見た恋愛映画のように、濃厚なものではなく、軽く触れるようなバード・キス。
「今はまだ、これが精一杯ですので」
 多分、私の顔は恥ずかしさで火照って真っ赤になっていることだろう。
 でも、ちょっとだけ、素直になろうと思った。
「もうちょっとだけ、待っていてくださいね」
「……ま、気長に待つよ」
 ぽん、と私の頭に手を載せ、プロデューサーが言う。
 その表情はとても優しげで。

 背伸びしないで、素直に。
 ――頑張ろうと、思った。
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Author:ねこようじP
ぽんこつノベマス民です。にゃうん。
ひっそりと動画公開中。
あとリンクフリーにて候。でもメールかコメントで通達していただけたらなと。
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アイコンは『サナララ』より、のぞみ先生。
ぽんこつさんです。

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